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【大人の自由研究】能登の調味料「いしる」の魅力に迫る

2026.10.16
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 能登に伝わる発酵調味料「いしる」。魚と塩などを原料に作られる魚醤で、日本三大魚醤の一つです。
 能登出身の私は、もちろん名前は聞いたことがありましたが、実は使ったことがありませんでした。せっかく地元の調味料があるのだし、使ってみたい!と思い、購入してみました。

いしる
輪島の谷川醸造さんの「能登秘伝 いしる」。使いきれそうなサイズ感でなんだか可愛いです。

 蓋を開けてみると、魚醤の独特な香りが。これは料理に合うのか?入れることで美味しくなるのか?実際に作りながら調べてみました。

いしるについて

 いしるは、能登地方な伝統的な調味料です。いしり、と呼ばれることもあります。原料は地域によって異なり、イワシやアジ、サバといった魚の骨や内臓、またイカを使用するものもあります。いずれも、骨や内臓を無駄なく使えるようにという生活の知恵から生まれたものと言われています。

 

いしるの成分表

 今回購入したいしるは、いわしが主原料です。材料はいわし、食塩、米麹と、非常にシンプル。

 ラベルの表記を見ると、「食塩相当量 21.3g」!生臭いのかと思い恐る恐る舐めてみると、意外と魚臭さはありません。塩味を強く感じました。食塩相当量からも、大量に使用するのは止めた方がよさそうです。

 一方で、いしるは「うま味」を強く感じる調味料だと言われています。また、調べてみると料理にコクを生み、食材のおいしさを引き立てるともありました。

 この「うま味」について、もう少し調べてみました。

いしるの「うま味」

 いしるは、例えばイワシなら、丸ごとのイワシを食塩を加え約半年~1年間桶の中で寝かせて作ります。この間、魚のたんぱく質が分解され、自然発酵が行われます。桶の下にたまった液を煮沸し、ろ過、冷却することでいしるが出来上がります。

※参考
いしり、いしる/農林水産省

 魚のたんぱく質は、製造過程で酵素などの働きによって分解され、アミノ酸やペプチドなどが生まれます。こうした成分の一部は、いしる特有のうま味や風味に関わっています。
 能登のいしるを分析した研究では、グルタミン酸やアラニン、グリシンなどの遊離アミノ酸が含まれることが報告されています。また、ペプチドや有機酸なども、いしる特有の複雑な味わいに関係すると考えられています。

 なかでも、グルタミン酸は代表的なうま味成分のひとつです。うま味は、料理に味の厚みや奥行きを与え、ほかの食材のおいしさを引き立てることがあります。

 また、肉や魚などに含まれるイノシン酸とグルタミン酸が一緒に存在すると、うま味を相乗的に強く感じることが知られています。つまり、いしるを料理に加えることで、いっそう「旨味」や「コク」が出ることが期待できる、ということです。

カレーや竜田揚げにも! 料理を美味しくする、いしるの魅力

 では、実際にいしるを使用して料理を作ってみました!

1. カレー:スパイスの奥に、うま味とコクをプラス

今回、特においしいと感じた料理のひとつがカレーです。

いしるとカレー

 いしるを加えてみると、カレーの味に厚みが加わったように感じられました。スパイスや肉、野菜などの風味に重なり、味わいに奥行きが生まれた印象です。
 魚醤の香りはあまり感じられませんでしたが、どことなくシーフードカレーの気配はしました。

カレー

 いしるに含まれるうま味成分が、カレーの肉や野菜に含まれるうま味(イノシン酸やグルタミン酸)と補い合い、旨味が強まったと考えられます。

 カレーの隠し味というと、しょうゆやソースなどを思い浮かべる方も多いでしょう。いしるも、少量から試してみたい調味料のひとつです。※入れるときは小さじ4分の1など、少量からお試しください。

2. コゾクラのいしる竜田揚げ:魚のおいしさを生かす

 もうひとつ印象的だったのが、コゾクラのいしる竜田揚げです。
 コゾクラをぶつ切りにしたものに、いしる、生姜、みりん、酒を入れ漬けます。10分~15分ほど漬けた後に、片栗粉をまぶして揚げ焼きにしてみました。

コゾクラのいしる漬
コゾクラのいしる竜田揚げ
この日はアジも揚げました。手前の色が濃いものがコゾクラのいしる竜田揚げです。

 魚の風味にうま味や発酵由来の香りが加わり、しっかりとした旨味を感じられる味に仕上がりました。
醤油味に近いのですが、それとは少し違う味がしました。

コゾクラのいしる竜田揚げマヨネーズ付き
甘めのマヨネーズをつけることで塩味が和らぎます。

 魚由来の調味料なので、魚との相性はバッチリといったところでしょうか。

3. いしる鍋:いしる料理の定番

 いしるを使った料理といえば…ということで作ってみました。だし汁代わりに、いしる、水、酒を使用します。

いしる鍋
ヤマト醤油味噌 さんによれば、いしる:水の割合は1:15がいいそうです。

 するめいかとエビを入れるのがよさそうでしたが、子供も食べられるようにエビ団子にしてみました。
重ねて言いますが醤油味とは違う、いしる独特の風味が感じられました。また、イカとの相性が良く、やはりより魚介を美味しく感じられる調味料、と言えそうです。

いしる鍋
汁は飲みすぎない方がよさそうです。

 魚介をもっと入れたり、出汁に昆布を使うなどすれば、いしるのグルタミン酸と作用し合い、さらに美味しく仕上がるのではないでしょうか。

4.野菜炒め、洋風肉じゃが:中華風の味付けとの相性◎

 こういう料理にいれたらどうなるのか?という興味本位でやってみました。

野菜炒め
湯気が立ち込めていますね…。

 結論から言うと、炒め物との相性も良かったです。いしるを主役にするわけではなく、隠し味として少量加えることで、味に奥行きが生まれ、より美味しく感じられました。
 野菜炒めは鶏ガラスープの素で味付けしたのですが、思ったより相性が良かったです。

洋風肉じゃが

 洋風肉じゃがはレモンがベースで、入れたらいしる味になってしまうのか気になりましたが、香りはそこまで感じませんでした。加熱することで熱分解が進み、匂いはほぼ無くなります。美味しい。

 ただ、鶏がらスープのほうが美味しかったので、中華系の味付けとの相性はよさそうです。

5.卵かけご飯:シンプルに合う!

 調べていると「いしるは卵と相性がいい」らしいので、卵かけご飯で試しました。生臭いものが苦手なので、いしる独特の香りがダイレクトに来たらどうしよう…と緊張しました。

卵かけご飯といしる

 生卵の上に数滴かけます。繰り返しますが塩味が強いため、少量から試しましょう。

これは…んまい!

 醤油とは違う、深い味わい。強い塩味が卵でまろやかになり、ちょうどいい味になっています。卵の濃厚なコクと強い塩味はとても相性が良く、卵の味をより引き立てています。

いしる卵かけごはん

 かけるだけのお手軽さなので、これはぜひ試してほしいです。

おいしさの一方で、気になった塩味。まろやかにするには?

 今回の試食では、うま味やコクが増したように感じられた一方で、塩味が強く感じられることもありました。いしるは食塩相当量が高いため、入れすぎると塩辛さが際立ちます。うま味を生かすには、加える量を調整することが大切です。

 そこで試してみたいのが、甘味やほかの味との組み合わせです。本みりんには糖類などが含まれ、料理に甘味や風味を加えます。本みりんを加えることで塩味の感じ方が抑えられることが報告されている研究もあります。

 今回の試食でも、みりんを合わせたり、甘味を感じるマヨネーズと一緒に食べたりすると、塩味が多少まろやかになったように感じました。

 また、卵との相性はかなり良く、卵料理にいしるを少量加えることで、いしるの塩味を和らげると同時に卵の味を引き立て、料理に深みを与えられる、ということが分かりました。

味の素ふわあま
味の素の、このマヨネーズがお気に入りです。

 甘味や酸味、脂質などが加わることで、料理全体の味のバランスや口当たりが変わり、塩味の印象が和らぐことがあります。ただし、マヨネーズやみりんが、いしるの塩分そのものを減らすわけではありません。また、今回の組み合わせについては、塩味を抑える効果を個別に検証したものではなく、試食時の感想です。

 塩味が強いと感じた場合は、いしるの量を控えめにし、みりんなどで味を調整するほか、ほかの調味料を減らすこともポイントです。

いしるを、もっと身近な調味料に

 いしるは、能登の食文化に根差した発酵調味料です。独特の香りが特徴ですが、うま味や風味を生かせば、鍋や煮物だけでなく、カレーや揚げ物など、さまざまな料理に活用できます。

 今回の調理を通じて感じたのは、いしるが単に塩味を加えるだけでなく、料理のうま味やコクを引き出す可能性を持っているということです。

 まずはいつもの料理に少量加えるところから。いしるならではのおいしさを、ぜひご家庭でも楽しんでみてください。

取材:冨水 佳葉(JFいしかわ)

石川県輪島市出身。海と漁師は身近な存在です。地元に貢献できる仕事がしたくて石川県漁協に就職、現在は県産魚のブランドPRや広報、公式SNS運用を担当しています。アジやブリなど青魚と呼ばれるような魚やバイ貝、海藻が好物です。石川県の美味しい魚は県の宝。その魅力を発信できるように頑張ります!

2026.10.16