「魚ポチ」「sakana bacca」いずれも魚好きなら聞いたことがあるかもしれません。なかなかスーパーで普段見ることができない珍しい魚が並んでおり、見るだけでも楽しいサイト、店舗展開をしている、株式会社フーディソンは、10年以上も前から石川県の四季折々少量多品種の多種多様な魚を積極的に使っていただいています。
今回、株式会社フーディソンの木下執行役員に石川県の魚の魅力、どのような思いで扱ってくれているのか、また将来に向けて深堀したお話をお聞きしました。

―石川県の魚を取り扱うようになったきっかけを教えてください。
木下執行役員:元々、弊社のバイヤーが前職時代から輪島や西海地域との繋がりがありました。ただ、当初は価格相場が他産地より高めで、積極的に石川県の魚を仕入れたいというニーズは高くありませんでした。甘えびも北海道産を主に扱っていましたし。
最初は金沢の魚から仕入れを始め、現在では輪島の魚も漁協から直接送っていただけるようになりました。展示会や商談会がきっかけではなく、既存の人脈や情報から少しずつ始まったと聞いています。
―石川県の魚で、他県とは違う特徴はありますか?
木下執行役員:東京の市場にあまり出回っていない希少価値の高い魚が他県よりも多くあることは石川の特徴だと思います。一方で、東京の市場で流通している魚種でも出荷のピーク時期が他県とずれているので、他県産が少なくなっても品質の良い石川の魚を販売できる魅力を感じています。 また、魚種の豊富さが魅力で、まとまった量はないのですが、金沢だけでなく、能登エリアも含めると非常に多様な魚が揃っています。大手スーパーなどは限られた魚種でいいかもしれませんが、弊社のように中小飲食店向けに多種多様な魚を提供している会社にとっては、石川のラインナップの豊かさは大きな魅力です。
―鮮度や品質に関する印象はいかがですか?
木下執行役員:鮮度は非常に良い状態で届けてもらっています。他県と比較しても鮮度面で十分勝負できるレベルです。ただし、県全体で品質が均一かというと、地域ごとに差はあるかもしれません。今後、全体的な底上げができるとさらに良いと思います。
―仕入れのルートについて教えてください。
木下執行役員:基本的には漁協(かなざわ総合市場流通課)経由です。新幹線輸送での仕入れもありますが、これは別の仲買さん経由で、毎週対応いただいています。最初からこの仕組みでスタートしています。
―天候でものがない、などの課題はありますか?
木下執行役員:石川県は時化が多く、予定通りに入荷しないこともあります。ただ、他の仲買業者を挟んでいないため、漁協と直接の関係があることで、「今日はこれがあるよ」といった柔軟なやり取りが可能で、助かっています。
―復興応援プロジェクト(2024年5月)について、始めた当時の思いを教えてください。
木下執行役員:弊社のミッションは「世界の食をもっと楽しく」。その中で、国内の産地の支援は大切だと考えています。東日本大震災の時も支援をしており、今回の石川の震災でも「何か力になりたい」と即行動に移しました。
我々ができるのは、首都圏で魚を高く・多く流通させること。消費者に「買って、食べて、応援する」機会を提供できたのは大きな成果だったと思います。



―復興から1年以上経って、思うことはありますか?
木下執行役員:メディアでも取り上げられる機会が減り、風化が進んでいると強く感じています。だからこそ、弊社としても何かもう一度動けないかと考えています。
―顧客層や、石川の魚に対する反応は?
木下執行役員:東京・中目黒の店舗では、石川県出身の方が甘えびを「家で煮る」といって購入されるなど、地元の食文化に触れる場面もあります。こうした“地元の味”が恋しくなる方にも届いていると感じます。
―漁協や県に対して、ご意見があれば教えてください。
木下執行役員:バイヤーからの声として、県全体の取り組みがやや見えづらい印象があります。せっかく魚種が豊富なのに、「石川県としての総合的な魅力」が外に伝わりきっていない。品質のバラつきも含めて、県や県漁協さんがもう一歩リードしてもらえるとありがたいです。
―石川県の魚をより多くの人に届けるために、今後どうしていきたいですか?
木下執行役員:「sakana bacca」や「魚ポチ」のように、魚種の多さを強みにしている弊社にとって、石川県の魚は非常に親和性が高いです。 今後は「石川の魚」というカテゴリー自体を、ブランドとして構築していけたらと考えています。福島の「常磐もの」のように、産地横断的にPRできると、より多くの消費者に伝わりやすくなります。
―最後に、、、持続可能な漁業・資源管理への取り組みについて教えてください。
木下執行役員:弊社では、全国の産地と連携して、持続的な取引や資源管理を意識した取り組みを行っています。取扱量や価格設定も含め、無理のない範囲での支援を続けることで、漁業が続けられるような環境づくりを支援しています。
―ありがとうございました!
取材先:木下 太志 氏
株式会社フーディソン 執行役員 sakana bacca事業部長 1978年神奈川県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、東京の百貨店の食品フロアマネージャーと生鮮担当バイヤーを経験。その後、地方創生のミッションに共感してフーディソンへ入社。現在は首都圏に10店舗を展開する魚屋sakana baccaの事業と地方創生プロジェクトの責任者を兼任。これまでに複数の自治体と地域活性化に繋がるプロモーション企画を立案・実行している。
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取材:島田 拓土(しまだ ひろと)
石川県農林水産部水産課
1988年生まれ 石川県金沢市出身。2011年長崎大学水産学部卒後石川県庁入庁。経営指導グループで藻場保全、団体指導、担い手担当、2014年に水産庁漁業調整課指定2班に出向し、沖合底びき網の担当、2016年に石川県に戻り漁業調整、資源管理を5年間担当し、2021年より現在の企画流通グループ流通、県産魚PR、水産業の成長産業化などを担当。魚は釣るより食べる&作る専門で大学の時のバイト経験を活かして実は調理師免許をもっている。