はじめに
飛び石連休となった2025年のGWの後半1日目の5月3日、橋立漁港の朝は異様な熱気に包まれていました。25年ぶりに復活するという”おさかな感謝祭”が開催されるとのことで、その様子を前日準備から一緒に手伝いながら取材してきました。
<橋立港おさかな感謝祭>
25年前まで(いつから始まったかは不明)橋立港で開催されていた、鮮魚即売会(当時は橋立港みなと祭り)。日頃の感謝の気持ちを込めてお手頃価格で販売、実施時期は年によって変わり、地元の祭りとあわせて9月に開催したり、5月中旬に実施していたそう。

はじまりは昨年11月、若い漁師から
復活にあたって、きっかけはとある若手(といっても漁師の中ではベテラン)の漁師の声でした。「もっと浜で食べる漁師飯を一般の人に知ってもらい、魚ってこんなにうまいんだ、と好きになってほしい。それと漁師も一般の人に自分のとった魚がこう見られているんだ、を自らが対面で魚を売ることで感じてほしい」との熱い想いからでした。
日頃魚の水揚げ、セリを行う漁港での開催は、多くの人を巻き込んでいかないと進まない企画であり、構想は立派でも現実にするには非常に多くの苦労があったそうです。まずは、所属する漁業の団体に、その後、港の全部の漁業の団体にも。GWは漁師もお休みの日なので、船主(親方)や船長だけではなく、乗組員にも代休をあてるのでどうか、という説明もし、皆が「よし、やろう」となって初めて開催に向けて動き出しました。 25年ぶり、ということもあり、どれだけ人が来るのか全く読めない中、当時の写真を参考に手探りで準備を進めてきました。
また、開催日の数日前は天候が良くなく、当日販売する魚をとりにいけないかもしれない可能性があり、本当に開催できるのか3日前まで分からない状況でした。
小雨の中、漁師・婦人部・職員総出のすべて自前での準備
前日は、朝8時半から婦人部による飲食販売の準備から始まりました。
”メギスの唐揚げ”の下処理は、ウロコをとって、頭を落として内臓をとる。作業自体はいたって簡単に思えるのですが、メギスはやわらかい身であり、捌きづらいこと。おまけに唐揚げで骨ごと食べられるよう小ぶりのサイズ、ということもあり、下処理のメギスの量は実に13箱分(およそ2,000尾ほど!)もあり、午前中で終わるのかな?と不安でしたが、そこはさすがみなさん、口とあわせて手が早かったです笑

次は”甘えびの塩炒り”ですが、こちらは非常にシンプルかつ楽ちん。洗った甘えびを沸騰した鍋に塩と酒をいれて10分ほど茹でるだけのもの。茹でたてをいただきましたが、甘えび漁師が、「これが一番美味い食べ方。これを知ってほしい」というのも納得の美味しさでした。(実際当日は最初に完売でした!)

最後に”甘えびの唐揚げ”用にえびの髭のカット作業です。こちらも気が遠くなるほどの8箱(3,300尾)でしたが、メギスに比べればなんのその。筆者が30分ちょっと外しているうちに、半分以上作業が終わっていました。


これらの作業は休憩も含め午前中には終了し、午後からは前日深夜まで操業していた漁師が乗組員含め皆集合しての、会場準備に取りかかりました。
まず驚いたのが、鮮魚売り場の足場組みでした。傾斜をつけて板を乗せられるように組まれており、これも漁師が前に働いていた地元の足場組みの人から借りてカスタマイズされ、ぴたっと売り場に合うように設計されていました。そこに25年前にも使っていたのれんをかけ、大漁旗を吊るして、のぼり旗を会場のあちこちに設置して概ね完了です。



その後は竹に大漁旗をつけ、港の入り口や各船に掲げるように準備。ここで雨も降ったり止んだりと悩ましい空模様でしたが、思い切って「ずぶぬれになれば明日干せばいいんや!」と漁師らしい(?)割り切りで小雨の中作業を進めました。



最後は駐車場の白線引き作業です。どれだけ人が来るかわからない中、およそ400台ほどが停められるよう、漁具倉庫前の敷地などを活用し、付近の小学校からライン引き車を借りてきて、間隔は漁協職員がパチンコ店やスーパーの駐車場で測った(らしい)採寸を参考にメジャー、ロープを使って引いていきました。司令塔のベテラン漁師が指示して、若手漁師がライン引きかな?と思いきや年増の機関長が引いていたり、、、と、この港の漁師の仲の良さが伺える光景でした。


<関連リンク>
25年ぶりに復活!橋立港おさかな感謝祭開催!(前編)

取材:島田 拓土(しまだ ひろと)
石川県農林水産部水産課
1988年生まれ 石川県金沢市出身。2011年長崎大学水産学部卒後石川県庁入庁。経営指導グループで藻場保全、団体指導、担い手担当、2014年に水産庁漁業調整課指定2班に出向し、沖合底びき網の担当、2016年に石川県に戻り漁業調整、資源管理を5年間担当し、2021年より現在の企画流通グループ流通、県産魚PR、水産業の成長産業化などを担当。魚は釣るより食べる&作る専門で大学の時のバイト経験を活かして実は調理師免許をもっている。